五十肩について(肩関節周囲炎)
腕が上げられない、腰に手をまわせない、髪を洗えない、シャツや上着の脱ぎ着ができないその他色々、肩が痛いと大変です。何より、その痛さは言葉にできないくらいツライもので、ズキっと痛みが走った瞬間は大の大人だ涙目になる程です。
肩の痛みは、痛みがではじめた年齢によっては「四十肩」「五十肩」などといわれますが、痛みの出る原因はみなさんそれぞれなので、人によって痛みの程度や対処の方法、治るまでの期間が違います。
五十肩などの「肩関節周囲炎」といわれる肩の痛みの原因は、肩の関節の周りの組織が傷ついて起こります。炎症が起きる原因は、年齢によっても違いますし、同じ年代でも普段よく肩を使う人と使わない人では違ってきます。
どうして痛くなるの?
肩をよく使う人の肩の痛み
肩は、使う人も使い方が悪いと故障しますし、使い過ぎても故障します。使い方が悪い人は肩こりの人に多くて、肩甲骨の周りの筋肉が硬くて肩甲骨が動いていません。肩は肩甲骨から使うようにしないと、肩の関節の負担が大きくなり過ぎて傷ついてしまいます。使いすぎの人は、野球のピッチャーを思い出してください。投げ過ぎたピッチャーは、肩を痛めます。同じように、例えば料理で毎日フライパンを振るような同じ作業を繰り返し行っていると、手でいう腱鞘炎のような状態になります。
肩をあまり使わない人の肩の痛み
使わない人の肩の関節は、使っていないドアの蝶番のように錆びついています。関節の滑りをよくする潤滑液が切れていたり、関節に石灰が溜まっていたり、筋肉が弾力を無くしていたりして、関節をスムーズに動かすことができない状態になっているので、無理に動かすと痛みが出ます。こちらは高齢者に多く、治るのにも時間がかかります。
肩の関節の仕組み
肩の関節は、鎖骨と肩甲骨と、腕の骨でできています。腕の骨は肩甲骨に付いていますが、肩の運動は肩甲骨とそれに付いている、鎖骨と腕の骨の3つが協力して行っています。
腕を挙げるときは、腕の骨だけではなく肩甲骨や鎖骨も一緒に動いています。肩こりなど、肩甲骨の周りの筋肉が硬くなっている人は、肩甲骨の動きが悪くなっているので腕だけが無理をして動くので負担が大きくなっています。
腕を前後左右に上げたり、後ろに回したり、色々な方向に動かせる肩関節は、腕自体に重みを支えたり、物を持ったり、作業をしたりと負担が大きい関節でもあります。
その負担をカバーしながら広い範囲で動かせるようにするために、肩の関節の周りにはたくさんの筋肉が付いていて、ちょっと複雑な構造をしています。
左の図にある筋肉は肩の内側にある筋肉で、その外側には僧帽筋や三角筋、広背筋といった大きな筋肉がかぶさっています。そのため、内側にある筋肉が傷ついてもマッサージや電気では届きませんが、鍼であれば直接施術することができます。
肩の痛みの鍼灸治療
肩の痛みの鍼灸治療例
こちらの写真の患者さんは、2日前に肩にわずかな違和感を感じ、翌日から腕が上がらないほどの痛みになったために来院されました。来院された時の状態は、まず腕を前に上げようとすると30°くらいのところで痛みが強くなり、それ以上あげることができませんでした。それ以外に腕を背中に回すなどのひねる動作ができず、シャツや上着を着るのが大変とのことでした。
いくつかの検査をした結果、写真の紫色になっている箇所が痛みのポイントであることがわかりましたが、この段階ではまだ痛みが強く炎症も強いようなので、鍼での刺激は避けて吸い玉だけで治療を行うことにしました。写真の紫色は吸い玉の痕で、かなり濃いめの色が出ていますが、この色が濃いほど症状は重く痛みが出ている場合は強い痛みになります。
吸い玉の治療時間は10〜15分程度で、治療後すぐには痛みに変化は見られませんでしたが、翌日も来院していただき確認したところ、痛みは軽くなり腕も上げられるようになったとのことでした。こちらの患者さんの場合は、五十肩ではなく筋肉痛の症状が強いものだったので、2回目の来院では鍼で治療を行い痛みがおさまればこれで終了ということにしました。
通常の五十肩の鍼灸治療
こちらの例は特殊な例で、通常の五十肩の治療では、このように短期間で改善されることはあまりありません。はじめの方にも書きましたが、五十肩は、肩の関節の周りの組織が傷ついて起こります。傷ついた組織が治るのには時間がかかります。傷が治って痛みがおさまっても、肩が元のように動かせるようになるためにはリハビリが必要です。
一旦固まってしまった関節を動かすのは、時間がかかり痛みもあります。リハビリは少しずつ、直ぐに結果が出なくても焦らずに根気よく続けることが大切です。
上の画のように肩の関節の周りには、たくさんの筋肉がありますが、実はツボもたくさんあるんです。その中から、肩の関節の痛みの治療に使われることの多いツボをいくつかご紹介します。
「肩髃」(けんぐう)は、前へならえをしたときに、肩の関節のところにできるくぼみのところにあります。「臂臑」(ひじゅ)は、肩髃から肘に向かって少し下がったところにあります。
「天宗」は、肩甲骨の真ん中辺にあります。「肩貞」は、肩の後ろ側で、脇を締めたときにできるシワの少し上にあります。
上の筋肉の画と見比べると分かりますが、どのツボも肩の関節の周りの筋肉の位置にあります。
杏の樹鍼灸治療院では、肩の関節の周りにあるツボや、手足のツボに鍼、灸、吸い玉などをして肩周りの血流を良くします。血流が良くなると、筋肉が柔らかさを取り戻し、血液で運ばれてきた栄養で傷ついた筋肉が修復します。関節に付いた石灰などの付着物も、血液が流してくれます。