嗅覚や味覚の障害について
臭いが分からない「嗅覚障害」や、味が分からない「味覚障害」は、病気や障害が原因で起きる場合と、風邪や鼻炎の後やストレスなどによって起きる場合がありますが、どちらの場合も治療の難しい症状です。
臭いは、鼻の穴を通って鼻の奥にある臭いのセンサーに届き、センサーから臭いの神経を伝わって脳に届けられます。
臭いが分からなくなるのは、鼻の粘膜が腫れていたり、鼻がつまっていたりして臭いがセンサーまで届かない場合、病気などのためにセンサーや神経が正常に働かなくなっている場合、病気で脳が臭いを認識できなくなっている場合などがあります。
風邪をひいたときに臭いが分からなくなるのは、風邪による鼻炎で鼻の粘膜が腫れたり、鼻がつまったりするのが原因で、通常は風邪が治れば自然に治ります。風邪が治っても臭いが分からないという場合は、風邪のウィルスが原因で臭いの神経が正常に働かなくなっている可能性があります。この場合でも、しばらくすると自然に治る場合がありますが、治らない場合は専門医に相談してください。
味が分からなくなる原因の一つには、舌や喉の奥にある「味蕾」という味を感じるセンサーの異常があります。味蕾の異常は、ダイエットや極端な偏食による亜鉛の不足で起こります。
それ以外の原因では、加齢、病気、抗がん治療などによる唾液の異常、ストレスなどがありますが、風邪や鼻炎、ストレスが原因の場合、臭いと味が一緒に分からなくなってしまうことがあります。
臭いを伝える神経も、味を伝える神経も脳から枝分かれした抹消の神経ですが、臭いの神経が「嗅神経」という臭いを伝える専用の神経なのに対して、味を伝える神経の1部は、顔の筋肉を動かす顔面神経が担当しています。そのため、顔面神経の麻痺でも味覚に異常が現れることがあります。
嗅覚障害・味覚障害の鍼灸治療
嗅覚障害、味覚障害で、鍼灸治療で改善が見込めるのは、風邪や鼻炎、ストレスが原因のものです。鼻の変形で臭いが分からないとか、味蕾が壊れて味が分からないとかいうものは、鍼灸の施術で改善するのは難しいでしょう。
当院の嗅覚障害・味覚障害の症例
47歳 女性
風邪をひいてから、臭いと味が分からなくなり、特に味覚を気になるということでした。治療は週1回のペースで行い、治療開始から2ヶ月くらいでほんの少しの間だけですが、味が分かるようになってきました。感じ方としては、食べ始めた時に味が分かることがあり、少しするとまた分からなくなってしまうということです。
治療を始めたのが年末からで、改善が見られ始めたのが2月だったのですが、季節的に風邪をひいてしまい元に戻ってしまいました。その後、風邪が治ってから治療を再開し、1ヶ月くらいでまた改善が見られました。
83歳 男性
こちらの方も、風邪をひいてから臭いと味が分からなくなりました。この方は、嗅覚の方を気にしていました。こちらも治療は週1回のペースで行い、2ヶ月目くらいから少し臭いを感じられるようになってきました。この方の場合、上記の女性の方と違って瞬間的なものではなく、感じ方が鈍いながらも継続して臭いを感じられるようになってきたということでした。
治療は、顔、お腹、手足のツボに鍼と灸を使って行っています。