うつ病について
うつ病は、統合失調症と並ぶ2大疾患の1つで、気分、思考、意欲の調子に変化が見られる病気です。具体的には、強い不安感、緊張、焦り、苦悩などを感じる、何かに集中したり考えたりすることが面倒になる、それまで興味を持っていた物事や、その他何に対しても興味がなくなる、外出など行動する意欲を失うなどの症状があります。
症状が軽い場合は、何事も面白くない程度ですが進行すると、だんだん表情も暗く憂鬱になり、口数が少なく声も小さくなってきます。さらに進行すると、顔は無表情になり、自分で自分を責めたり悲観的になったりして、自殺を考えたり実行しようとしたりします。
症状の現れ方には個人差があり、すべての人にすべての症状が現れるわけではなく、また1日のうちでも変動がみられます。一般的に朝の方が強く現れ、夕方から夜にかけては軽いことが多いようです。
うつ病の判断基準
- 抑うつ気分
- 物事に興味を持ったり、喜んだりしなくなる
- 考えることが面倒になったり億劫になる
- 疲れやすく、意欲が低下し気力が減退する
- 自分は生きている価値がないと否定的になったり、悪い事はすべて自分の責任だと思うようになる
- 考える事や、集中することができない
- 自殺を考えたり、実行しようとする
- 食欲の減退、体重の異常
- 不眠または眠り過ぎなどの睡眠障害
以上のうち、1・2のうちどちらかを含む5つ以上の症状が2週間以上同時にみられる場合は、うつ病が疑われます。
同じような症状のものに「抑うつ神経症」がありますが、抑うつ神経症がストレスなどが原因となって引き起こされるのに対して、うつ病には原因となる特別なきっかけはありません。また抑うつ神経症は、1日のうちの変動はなく自責感もうつ病ほど強くありません。
うつ病の治療は、抗うつ薬を使った治療が一般的ですが、薬以外の治療法として「認知行動療法」というものがあります。認知行動療法は、薬だけに頼らない治療で、訓練を受けた医療者による面接によって行われます。この治療はストレスの軽減が目的で、中等度のうつ病患者の7割に効果がみられています。
認知行動療法は、精神科などの医療機関で受けることができ、うつ病では2010年に保険適用になっていますが、2016年からはうつ病以外の社会不安症、パニック症、強迫症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にも保険が適用されるようになっています。
うつ病の鍼灸治療
鍼で心の問題が改善できるの?と思われる人が多いと思いますが、鍼の基本である東洋医学には心と体の関係についての考え方がありますから、鍼灸治療でもその考え方に沿って施術をしていきます。
上の図は、東洋医学の五行という考え方から、五つの臓器と感情や味、季節などとの関係を表したものです。
この図にあるように、肝は怒り、心は喜び・興奮、脾は心配・悩み、肺は悲しみ・孤独感、腎は恐怖とそれぞれ関係していることがわかります。
ストレスで胃が痛くなるとよく言いますが、東洋医学では胃と脾はセットです。この図では、脾は心配や悩みの影響を受けやすいとなっていますから、ストレスで胃が痛くなるというのもわかりますね。
また東洋医学では、肝はストレスの影響を受けやすい臓器とされています。そして、肝から脾に向かって矢印の線が引かれています。これは、肝の気の変化が脾に影響するということを表しています。このことからも、ストレスで胃が痛くなるというのがわかります。
陰陽や五行の考え方は、占いの四柱推命でも用いられていますが、東洋医学の基本でもあるので漢方の処方などにも用いられていて、鍼灸治療では施術に使う「ツボ」を選ぶときの考え方の元になっています。
鍼灸治療で使われるツボの中には、「神門」「神堂」「神道」そのほか”神”の字が使われているものがたくさんあります。神は精神の神、神(しん)は心(しん)に通じているとして、この神のつくツボは精神や心の病の施術に使われることの多いツボです。
こちらは、神門というツボです。
ツボの場所は、手のひら側の小指から手首のシワのところまで下がったところにある、小さな骨のすぐ下の辺りにあります。
みなさん、ストレスで心が落ち着かない、眠れないといったときに手で軽く押してみてください。
うつ病は、ストレスによってついた心の傷が、積み重なってできた心のケガのようなものです。ケガをしたら、みなさん安静にしますよね。ケガをしているのに頑張ってしまうと、ケガは悪化してしまいます。うつ病にかかりやすい人は真面目な性格の人が多いので、つい頑張ってしまいます。ケガをしたらまず安静にして、そしてあせらずゆっくり治療していってください。